しゅん
皆さんは最近何かと目にすることが多い「地政学」という学問を知っていますか?
とても簡単に「地政学」について解説すると、国が戦略的に地形や政治的に重要な地点や道をうまく活用し、効率的に支配するための学問です。
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世界には地形や政治の影響で重要な地点やエリアが多数存在します。
そこをマクロな視点で読み解くことで効率の良い戦略をたてることができます。
グローバル化が進んだ現代において「地政学」を覚えておくことで、世界のニュースがなぜ起こったのか原因を知ることができ、さらには将来的にどのようなことが連鎖して起こるかという予測を立てることもできるようになります。
この記事では最近Amazonや本屋の書籍ランキングでよく見かける「地政学」について、初心者からある程度地政学を学習した人に向けてセクションに分けて徹底解説していきたいと思います。
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地政学についてサクッと学習したい方は、まず最初のセクションを読んでいただければと思います。
このページの目次
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このセクションでは、地政学という言葉を初めて聞いた人でもわかりやすいようになるべく簡単に説明したいと思います。
地政学(ジオポリティクス)という言葉は、「地球(ジオ)」と「政治学(ポリティクス)」を掛け合わせた合成語で出来ています。
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その語源の通り地形や政治が与える影響をマクロな視点でみることで、
その先に起こることを予測することを目的とした学問です。
物事が起こることには理由があります。
その理由を「地理」や「政治」「経済」などの観点から広く分析することでその事象が起こったことの理由が分かり、更にはその先の展開の予測もできるようになります。
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広い視点で分析をすることで効率的な戦略を立てることができます。
マクロな視点から事象を分析して優位に立つことを目的とした地政学ですが、地政学の知識を利用することでどの地点を押さえることが重要か知ることができます。
日本の物流の要といえる東京大阪間のルートですが、静岡県の由比駅付近では山と海に挟まれた狭い土地に東名高速道路や国道1号線、新幹線、東海道線などの主要交通網が集まっています。
このような交通の要衝を押さえることで効率よく物流網を支配することができます。
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江戸時代の日本の関所が置かれた場所を見ると、
地形的にどこが要衝だったかが分かりやすいです。
地政学を学習することで、世界のニュースがなぜ起こったのかの原因を知ることができ、さらにはそのニュースからどのようなことが連鎖して起こるか予測をすることができるようになります。
なぜ、アメリカが世界の覇権国家になれたのか?
なぜ、ロシアは北方領土を返還しようとしないのか?
なぜ、シンガポールはアジア一の富裕国になれたのか?
などのニュースや歴史的事件が起こった理由が分かるようになります。
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歴史上のニュースや事件も地政学の広い視野で分析をすることでその繋がりが分かるようになり、
世界のニュースが100倍面白くなります!
地政学の特徴として、地理や政治、経済から宗教まで様々な観点から広く分析する点があげられます。
地政学の考え方を応用することで、別のものとして学習してきた「地理」と「歴史」などの断片的な知識を線で結び付けることができるようになり、そのつながりを理解することで更に深く理解をすることができるようになります。
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歴史が動いた事件にはその原因があるということが視覚化され、
様々な知識を縦断してつながりを理解したり、
その先を予測できるようになります。
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ここまではサクッと地政学について解説してきましたが、
ここからは少し掘り下げて地政学を解説したいと思います。
興味のある方はぜひ引き続きお付き合いください。
地政学の歴史は学問としては新しく、19世紀後半にドイツで生まれたと言われています。
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それ以前にも地形に関する戦略のセオリーのようなものは存在していましたが、
学問として戦略に取り入れたのはドイツが最初と言われています。
スウェーデンのルドルフ・チェレンが「地政学」という名称を付けたのを皮切りに、学問としての発展にはアメリカのアルフレット・セイヤー・マハン、ニコラス・スパイクマン、イギリスのハルフォード・マッキンダー、ドイツのカール・ハウスホーファーの4人の学者が深くかかわっています。
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ハウスホーファーの研究は、
ナチス・ドイツ政権下で「御用学問」として扱われていた関係で不評を受けています。
日本では第一次世界大戦期にチェレンの「ゲオポリティク」が紹介されてから「地政学」という名称で一般にも広く使用されるようになりました。
第二次世界大戦中には「地政学ブーム」が起こるほどに盛り上がっていましたが、敗戦後に多くの地政学者が追放されたことや戦争や軍事研究について禁止や自粛をしてきた流れでタブー視されてきました。
1970年になると再び研究が行われるようになり「地政学」が一般にも広く使われるようになりました。
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2021年現在も地政学ブームといえるほど、
地政学関連の書籍などが本屋やAmazonでランキングに入っています。
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地政学にはいくつかの基礎概念があります。
その中で特に重要なものを7つ解説します。
地政学では、各国の特性によってランドパワー(大陸)国家とシーパワー(海洋)国家に分類して考えます。
ランドパワー国家は大陸の内陸に位置する国で主に鉄道や道路網の拡大や陸軍力の増強で国力の拡大を図る国家です。
「ロシア」「中国」「ドイツ」などが該当します。
シーパワー国家は海洋に面した国で主に造船技術や港湾設備などの整備や海軍力の増強で国力の拡大を図る国家です。
「日本」「アメリカ」「イギリス」などが該当します。
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大航海時代や鉄道の発達など歴史の流れとともにランドパワーとシーパワーが交互にせめぎあってきました。
現在はシーパワー国家のアメリカが世界の覇権を握っています。
地政学では、陸と海に世界の中心をおく理論が唱えられています。
マッキンダーはユーラシア大陸を世界の中心としてハートランドと定義し、ここを支配するものは世界を制すると唱えました。
その一方マハンは世界の海洋を支配するものが世界を制するというワールド・シー理論を唱えました。
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陸と海の世界の中心という理論が発展してその中間点に、
リムランドとマージナルシーという概念が生まれました。
リムランドはユーラシア大陸の中心のハートランドを覆うように三日月の形をした地域です。
北西ヨーロッパから中東、インド、東南アジア、朝鮮半島に至るユーラシア大陸の沿岸部を指します。
マージナルシーはユーラシア大陸周辺の群島や半島に囲まれた海域です。
ベーリング海やオホーツク海、日本海、東シナ海、南シナ海などを指します。
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このリムランドとマージナルシーでランドパワーとシーパワーの勢力がぶつかるため、
この地域は紛争が起きやすいという特徴があります。
なぜ中東は紛争がおさまらないの?3分で分かる地政学的解説! - LIFENOTE
地政学では、対立する大国に囲まれた小国や中立地帯をバッファゾーン(緩衝地帯)と呼びます。
大国同士が国境を接していると衝突する危険性が増しますが、バッファゾーンがあることで衝突の危険性が軽減されています。
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バッファゾーンでは大国同士の代理戦争が起きやすいという特徴もあります。
ロシアはなぜクリミア半島を併合したの?地政学からサクッと解説! - LIFENOTE
地政学では物流の要の海運のルートとそのルート上で特に重要な場所を定義しています。
海運の物流ルートはシーレーン(海上交通路)と呼ばれ、他に通る場所がないなどの重要な場所はチョークポイント(戦略的要衝)と呼ばれています。
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石油の大半が通るマラッカ海峡やアジアとヨーロッパを結ぶスエズ運河、
太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河などが有名です。
有事の際にはチョークポイントを押さえることで、敵国の物流を停滞させ経済に打撃を与えることができます。
通行不能で日本経済は破綻?日本の経済を支えるシーレーンを解説! - LIFENOTE
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ここからのセクションでは、主要国の地政学的特徴についてサクッと解説していきます。
詳しい解説を確認したい方はリンク先の記事をぜひお読みください。
現在の日本はシーパワー国家で、歴史的には近代以前はランドパワー国家⇒太平洋戦争まではシーパワー&ランドパワー国家⇒太平洋戦争後はシーパワー国家と変遷してきました。
島国で海流や季節風などの影響で外から攻められにくく、自国で自給自足が可能な気候という特徴を持っているため、独立を守ることができた数少ない国です。
地政学で重要な地点として、北方領土や沖縄本島、尖閣諸島などがあります。
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平和な日本にも北朝鮮のミサイルのリスクや石油の輸入ルートが限られるなどの問題点があります。
日本はアメリカの防波堤?地政学から見る日本とは? - LIFENOTE
現在の覇権国家のアメリカですが、地政学ではアメリカはシーパワー国家で「辺境の大きな島国」と考えられています。
辺境の島国という場所柄、防衛上はその距離が有利に働き脅威が少ないといえますが、攻撃にも向かないという特徴を持っています。
そのような特徴をうまく使い、ユーラシア大陸の3大重要拠点の①ヨーロッパ②中東③アジアに対し、「オフショア・バランシング」を行っています。
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「オフショアバランシング」とは、沖合(オフショア)から対象を観察し、
パワーバランスを崩しかねない大国が表れた場合、
他の国と共闘してその国を叩くという戦略です。
アメリカは島国?地政学から見るアメリカとは? - LIFENOTE
ロシアは地政学での世界の中心のハートランドにあるランドパワー国家です。
世界一の面積を誇る広大な国土を持っていますが、そのほとんどが気温が低く農耕に適さない土地となっており、長い海岸線がある北極海は冬の間港が凍ってしまい使うことができないという特徴を持っています。
そのため、ロシアは常に南方に国土を広げようとしてきた歴史があります。
また、ヨーロッパとの間にバッファゾーンを作り、直接国境を接しないようにするという特徴も持っています。
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ロシアとヨーロッパの代表的なバッファゾーンがウクライナです。
ウクライナ東部のクリミア半島をめぐって「ウクライナ危機」が起こりました。
ランドパワー大国!ロシアの地政学を6つの特徴から徹底解説! - LIFENOTE
中国はランドパワー国家として領土を広げて、周りの脅威を排除し続けてきた国です。
古代から国の四方に「四威」という脅威があり、近年まではロシアやベトナムなどの国境を接する国との国境紛争に悩まされており、2004年にロシアとの国境が確定したことで、陸上の国境がやっと画定しました。
陸上での国境が画定したことと、経済の発展によって世界第二位の経済大国になったことで、近年ではランドパワーだけでなくシーパワー国家として海洋進出も狙っています。
また、現代のシルクロードと呼ばれる物流網の「一帯一路」という構想に積極的に投資をしたり、南下政策としてインドシナ半島に鉄道を建設したりとランドパワーの強化にも余念がありません。
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歴史上ランドパワーとシーパワーを両立した国はないといわれています。
中国が今後ランドパワーとシーパワーを両立した国になれるかは世界が注目しています。
世界第二位の経済大国中国はどんな国?3分で分かる地政学的解説! - LIFENOTE
シンガポールの位置は世界でも重要なの物流網(シーレーン)のチョークポイント「マラッカ海峡」に接しているため古くから貿易の拠点として発展してきました。
また、アジアの中心に位置していることからアジアのビジネス拠点として様々な企業が進出しています。
そのため、貿易の拠点としてとアジアのビジネスの拠点としてシンガポールはアジア最富裕国にまで経済が発展しました。
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小国にとってその国が世界のどの位置にあるかということはかなり大きな要因になります。
小さな都市国家シンガポールはなぜ発展したの?地政学から徹底解説! - LIFENOTE
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ここでは地政学の入門におすすめの本を紹介したいと思います。
どの本も読みやすいものを選んでいるので、
地政学に興味を持っていただけたらぜひ読んでみてください。
地政学の第一人者と呼ばれる地政学・戦略学者の青山学院講師・奥山真司氏が監修した地政学の本です。
「見るだけで会話ができる!」というキャッチコピーの指す通り、図表が多く、視覚的にサクッと頭に知識が入っていき、2時間程度で読み終えることのできる入門編におすすめの読みやすい1冊です。
内容は本格的なので、地政学の基礎にとにかく触れてみたいという方に特におすすめする1冊です。
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サクッとわかるビジネス教養シリーズは他にも「統計学」や「行動経済学」などの本が出ているので読んだことがある方は多いかもしれません。
多くの地政学の著書を監修している地政学の権威で世界史の参考書も数多く手掛ける、予備校の講師・茂木誠氏が監修した地政学の本です。
ロングセラーの「いちばんやさしい地政学の本」の改訂版で、時代に合った国際情勢を踏まえた内容になっています。
茂木氏の監修ということだけありマンガでも内容が薄いということはなく、地政学についてわかりやすく、簡潔にまとまった1冊です。
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今回は入門書のおすすめということで、読書に慣れていない方でも取っつきやすいマンガで地政学が勉強できる本として紹介させてもらいました。
英国王位防衛安全保障研究所アジア本部(RUSI Japan)の所長を務める、秋元千秋氏が書いた地政学の本。
地政学の核となる国際関係や国際情勢など難しい部分を簡潔にわかりやすく解説してくれる1冊。
歴史に沿って地政学という観点から世界の情勢を解説しています。
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この本を読むことで地政学の基礎知識から実用的な知識までを一度に学ぶことができます。
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ここではおすすめの本の一部だけを紹介していますが、
リンク先では15冊のおすすめの本を紹介しています。
ぜひそちらも合わせてお読みください。
【2021年版】地政学おすすめの入門書15選をランキングで紹介! - LIFENOTE
平和な日本に住んでいると世界の国々が自国の国益のために戦略的に行動していると考える機会はほとんどないかもしれません。
地政学という学問は地理や歴史、経済や宗教など様々な観点から情報を紐付け、広い視点から物事を分析する学問で、この考え方を覚えておくだけで様々なことに応用が利きます。
地政学に興味を持ってここまで読んでいただいた方、ぜひ「地政学」を通じて世界のニュースや事件、はたまた将来について興味を持っていただければとてもうれしいです。
しゅん
これからも地政学の面白さを世に広めるために記事を書いていきたいと思います。
引き続きLIFENOTEをよろしくお願いいたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。